1990-01-01から1ヶ月間の記事一覧

一章

第一章 どこだ、ここは。 渡来亮は見たこともない光景にキョロキョロと辺りを見回した。いや、もしかしたら見たことはあるのかもしれない。しかし仮にそうだったとしてもそれがわかる人間はそうは居ないだろう。そこはそれほど深い森か林の只中で、冷たい風…

二章

第二章「ん……」 それは真っ暗な部屋に小さな明かりが灯るかのように、宙をさまよっていた亮の意識はゆっくりと覚醒した。 あれ、寝ちまったか…… 身を起こして立ち上がる。梅か桜か、淡い赤の花が描かれた襖を開き、隣の部屋の障子張りの襖の隙間から見れば空…

三章

第三章 亮は転ばぬよう最低限の注意ははらい、しかし決して加減の色は見て取れぬほどの限りなく全速力に近い速度で石段を駆け下りていた。もともと拷問の類ではないかと疑うほどに長く、かつ急勾配を誇る石段だ。しかも山道の石段にありがちな足場の狭さを忠…

四章

第四章 ……眩しい。瞼越しに感光する眼球は重く、妙に耳鳴りもする。全ての感覚が、まるで今まで凍結されていたかのように不自然で、体全体が妙に重苦しかった。 「……」 ゆっくりと、瞼を開く。まるで誰かに抑えられているかのようにずっしりと重い瞼をゆっく…

五章

第五章 ここはどこだ…… 相変わらずの真っ暗闇の中。開いた目でぐるりと辺りを見回す。 唯一つ、さきほどまでと違うのは、空間に壁らしいものが一つもないところ。足はたしかに何かの上に立っているのだが、その場所に床はなく。ただとりあえずの足場があるだ…

終章

終章 頭の中で、歌が聞こえる。 柔らかい音色は人の声でありながら、そこには歌詞、旋律に乗せられた言葉が無い。 それはまるで変わった楽器のような音。 そこにあるのは、繊細に空気を振るわせる音色と、清い流れのような旋律。 ―― 「ん……」 朝、まだ深いま…

目次 序「語る者」・壱「籠女」:http://d.hatena.ne.jp/erinyes/19900123 弐「籠目」:http://d.hatena.ne.jp/erinyes/19900122 参「夜明けの晩〜明けない夜」:http://d.hatena.ne.jp/erinyes/19900123

壱:籠女「では、そういうことで。」 そう、私の前に立つ男が言う。いかにも小男らしい、細い身体に立派な着物を着込み、洒落たつもりか、口元に生やした髭が嫌悪感を駆り立てる。手には緊迫を散らした群青の扇子。この辺りでは手に入らない、藍の鼻緒の下駄…

・序:語る者 そこは、暗かった。暗い、暗い、部屋だった。光は一つ、中央にともされた一つの蝋燭。ただ、それだけ。故に、壁は見えず、床の果ては知れず。ただ、ぼんやりと朱い光の中に、幾人かの人影だけが、見て取れた。 男、女、小さな者から、大きな者…

弐:籠目その日は結局それ以上のことは何も無く、通された部屋の中で、私はただ、ぼんやりと膝を抱えて、隅の方に座り込んでいた。……いや、これはちょっと部屋とは呼べないかもしれない。むしろ、牢獄だ。畳も敷かれず、むき出しの上に塵や埃でざらざらと不…

参:夜明けの晩〜明けない夜私がここにきてから十日がたった。別段変わることは無い、日常。部屋の状態こそひどいけれど、雰囲気の問題だかなんだか、一応毎日着物は洗わされるし、着替え用の着物も一枚もらっている。毎晩身体も洗えて、朝晩に食事も出来て…

pon

平成二十年最初の週刊朝日を読んで色々。思いついたままを並べているので結論までまとめてはいません。 まず、私ジャーナル(微妙に表記違うかも)において。 時々そうだけど、あれ書いてる人はラノベを比較対象に持ち出すとき、単純に比較対象としてるのか…

彼女ができました

_、_ ( ,_ノ` ) [ ̄]'E ズズ Guten Abend,親愛なる黄昏の旅人よ。 情けと報いの海原を流離う内に このBlogに辿り着いてしまった様だね。 残念ながらここは地雷バトン、不毛の記事だ。 ドガーン、ガシャーン ★ルール 見たら(騙されたら)やる。 タイトルを…

彼女ができました

_、_ ( ,_ノ` ) [ ̄]'E ズズ Guten Abend,親愛なる黄昏の旅人よ。 情けと報いの海原を流離う内に このBlogに辿り着いてしまった様だね。 残念ながらここは地雷バトン、不毛の記事だ。 ドガーン、ガシャーン ★ルール 見たら(騙されたら)やる。 タイトルを…

ネタ用に

この年は、僕にとって始まりの年。 その年の日記枠を、僕はネタ用に使おうと思う。 どうしても記事のまえにクッションをおかないときに、ここを使うと思う。 ロマンを描くのは……