アムリタ

[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)

[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)

 なんか、わけのわからないものを見た。感じとしては、穏やかな中編映画を見たような感じ。
 ファニーな要素もあるけど決してファニーな話ではなく、哲学、思想的にインタラスティングな要素もあるけどやはりまたそういう話ではない。なにか、もっとファジーで、五感的にインタラスティングな話。感覚的には、初めて断章のグリムを読んで、文章に痛覚を刺激されて震えたあの時に近いのかもと思うけど、それとは何か(確実なのは五感の介在の有無だけどそれとは別に)違う。読み終えた後の悔しさで言えば海の底とか空の中、シアター!と通じあうものもあるけど、これもやはり、作者のプロット構文に慣れているかどうかというところもひっくるめて何かが違う。文章に引き込まれる感覚が、どことなく文学少女に似てる、とは思う(その引き込まれ方の質も、やっぱりなにか違うんだけど。文学少女はほわほわしながらキャラクターに感情移入していく感じ。アムリタは仲の良い知り合いのような、緊張感を持った近さで傍観しているうちに隙を突かれて捕まっているような……?)。
 少しだけあった文章、文面の視覚的な効果も、乱発せず、要所で来るからすさまじい。

 要素を拾い上げていけばもっと言えること、言いたい事はあるし、あるのだろうけど、ここいらで。面白かった。
 
p.s.この作品の設定がすっと身に馴染むか、トンデモ、とかなんでもあり、と思ってしまって少なからず抵抗感を覚えるかどうかの差は、自然主義的でない物語に対する慣れの有無によるのかなぁ、などと、同じくこの本を読んだという友達と話して思ったり。