続・そう君 ある夏のこと

5(最終回)

「ねえ、徹?」 相変わらずすぐ前にははしゃいでいる巴とそれを宥める優。夜空にはいよいよ終盤に向けてより一つ一つが鮮やかなものになっていく花火。ある者は飲み物の缶を、ある者は空になった焼きそばやたこ焼きのパックを片手に夜空を見上げる中で、そっ…

「……よっ」 「わ……っと」 突然後ろから背中を叩かれて、着物姿の徹が勢いよく振り返る。振り返って、その先に久々に目にする兄妹の姿を見て、突然の再会に思わず一瞬言葉をなくした。 「三木先輩じゃないですか!それに佳織も」 「久しぶり」 「お久しぶりで…

「……うるさい」 空には花火。土手に陣取る人は皆、屋台の声を聞きながらそれぞれにそれを見上げている、その中で、一人の少女が耐え切れないと言う様な声で呟いた。 そこにいたのは、短い茶髪を花火の色に輝かせる小柄な少女。隣にいる、黒髪、肌白の、こち…

「ありゃ、まだ少し早かったか」 川沿い。町の夜景から少し離れて、それでも一応の舗装はされた、そんな岸辺を歩きながら巴が言った。 日はすっかり暮れて、屋台もあちこちに立って。雰囲気はもう準備万端だというのに時間がまだ、予定時刻まで四十分もある…

「ちょっと、徹!早くする!」 「叩くな!わかったから、叩くな!」 八月の夕暮れ。聞こえるのは控えめな蝉の声。春日邸の玄関に、そんな声が響いていた。 「あんたが一番遅いんじゃないの。私も、凛も、優だってもう準備出来てるっていうのに」 「はいはい…